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タレルの空を見に
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ミラノから約一時間、列車に揺られて到着したのは Varese。
この日 この街に訪れた理由は二つ。

まずは一つ目。タレルの空を見に。

当ブログをご覧になってくださり、時折 感想メールを寄せてくださる
Tさんより (いつもありがとうございます) Varese にある Villa Panza に
私の好きなジェームス・タレルの部屋があると教えていただいたのは2年近く前。
今回ようやく そこを訪問するという夢が叶いました。

◆       ◆       ◆

Villa e Collezione Panza
 ― Una collezione d'arte contemporanea famosa nel mondo

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La Villa
Villa Panza fu costruita nella metà del XVIII secolo e ampliata in epoca neoclassica dall'architetto Luigi Canonica. Appartenuta a nobili famiglie lombarde (Menafoglio, Litta Arese Borromeo), trova la sua massima espressione grazie all'intervento dell'ultimo proprietario, il conte Giuseppe Panza di Biumo.
Grande collezionista d'arte contemporanea, a partire dagli anni '50 del Novecento, Panza iniziò a raccogliere nella Villa opere di straordinario interesse, esponendole con cura nei locali settecenteschi in felice accordo con i ricchi arredi e le preziose raccolte d'arte africana e precolombiana.
Incantevole cornice della Villa è il vasto parco che la circonda: più di 33.000 metri quadrati di verde che dominano la città e la corona alpina. L'originaria impostazione geometrica "all'italiana" del giardino è stata addolcita nell'Ottocento secondo il modello "all'inglese", creando così quell'atmosfera romantica tan to cara ai paesaggisti del XIX secolo.

La Collezione
Giuseppe Panza, inizialmente interessato all'espressionismo astratto americano, cominciò ad acquistare opere d'arte sconosciute al grande pubbilico sin dal 1956.
Considerato uno dei più importanti collezionisti d'arte nel mondo, fu tra i primi a proporre innovativi criteri espositivi per l'arte contemporanea: le opere progettate dagli artisti appositamente per la Villa sono ospitate nelle Scuderie, nelle stanze dell'ala padronale e nell'ala dei Rustici. Per quest'ultima, in particolare, i protagonisti dell'arte ambientale di Los Angeles - Irwin, Nordman, Turrell - che lavorano soprattutto sulla luce, lo spazio e la percezione, hanno appositamente progettato nuove installazioni. Nei locali attigui si trova l'importante raccolta di opere di Dan Flavin, realizzate esclusivamente con tubi di luce fluorescente. Ormai divenuta prezioso scrigno di un'arte oggi riconosciuta come una delle più alte testimonianze culturdali del XX secolo, Villa Panza ospita più di 150 opere d'arte contemporanea.
― Villa e Collezione Panza カタログより ―


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James Turrell  ― SKY SPACE ―


白コンクリートの壁と床と天井に囲まれた小さな小さな部屋。
その天井には正方形に切り取られた空。

・・・徐々に距離感が狂ってくる。
天井と同一平面上に青いキャンバスが張られているかのように。
手を伸ばせばあの雲を掴むことができるのではないかという錯覚が起こるほど、
空が近くに、目の前におりてくる。

その一方で、明度と彩度の低いこの閉鎖空間の、限られた開口部から
真っ青な空と現れては流れ消え行く雲を凝視していると
不可視領域に無限に拡がっているであろう外宇宙を強く意識させられる。

この天窓に吸い込まれて外に出たならば。
きっと、無自覚にも抑圧されていた何かが解放されるに違いない。 そんな気にさせられる。

◆       ◆       ◆

モネが異なる時間帯、異なる気候、異なる季節の瞬間、瞬間を捉え、
異なる光に溶ける 『ルーアン大聖堂』 や 『積み藁』 の連作を数多く制作したように、
ここでも移ろいゆく空の表情を、切り取られたキャンバスが刻々と捉える。

特に日の出・日没にかけて
それはそれは美しい光の画が 幾多も現れることだろう。


でも悲しきかな、所詮ただの観光客。 次の目的地に移動しなければなりませぬ。
わずかな時間でしたが、この空を目に焼き付けて。


タレルの空を見に_b0024177_9142276.jpg
     ― SKY WINDOW ―                 ― VIRGA ―




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日本でもこちらなどでタレルの作品を鑑賞することができます。

光の館 (新潟県十日町市)
金沢21世紀美術館 (金沢市)
地中美術館 (香川県直島町)
ベネッセアートサイト直島 (香川県直島町)

いつか行ってみたいなあ。
生涯の宿題だなー。


 continua ...

| # by dicotomia | 2007-07-01 23:55 | 旅先のイタリア語
イタリアで出会う、古代ギリシアの街 (おまけ編)
Museo Archeologico Nazionale 国立考古学博物館

遺跡群の入口から道路を挟んで反対側にあります。
パエストゥムや近くを流れるセーラ川流域から出土した
マグナ・グラエキア時代の彫刻や陶器、神殿を飾っていたメトープ部分の浮き彫り、
古代ルカーニアの墓を飾っていた石板・フレスコ画などが展示保存されています。

イタリアで出会う、古代ギリシアの街 (おまけ編)_b0024177_6163853.jpg

最も有名なのは、1968年にパエストゥムのネクロポリス(墓地)で発見された
『Tomba del Tuffatore (海に飛び込む男の墓) 』。(写真左下)
石棺を組み上げていた石板の蓋、内側に描かれていたフレスコ画で、
紀元前480年頃のものと推定されています。
素晴らしい保存状態で発見された この 「海に飛び込む男」 という不可解なテーマの石板は
古代ギリシアの絵画的資料がすっかり失われた現在において
大変貴重な存在となっているそうです。


◆       ◆       ◆


さて。 ここでもチケット売場の陽気なオジサンに話しかけられました。
しばらくの間、定番会話 (「日本人か?」 「どこから来たのか?」 「いつイタリアに来たのか?」
「イタリア語を話せるのか?」 ecc... ) を交わしていたのですが、
オジサンはふと何かを思いついたような表情をし、「コッチに来て」 と私に手招きをしました。

そして、壁に貼られていた一枚の白い紙を剥がし、
「ここに同じ意味の言葉を日本語で書いて欲しい」 と言って私に手渡してきました。

その紙に書かれていたのは・・・
----------------------
"Toilet Chiuso"
"Toilet Closed"
"(恐らくドイツ語)"
----------------------

・・・ハイ、確かにコチラ、トイレ出入口横の壁に貼ってありましたね。
ん? もしかして、トイレが壊れているのかー!? わははー、さすがイタリア!!(笑)

続けて、太い黒ペンをオジサンから渡される。

うーーーん。 と・・・ 日本語ね。 そうね。 何て書こう~?
えーーーと。 "使用不可"・・・ "禁止" まで強めてもいいかな~。

指示通り一番下に追加して、 "トイレ使用禁止" と書き入れてみました。
それを見ていたオジサン、 「Bello!」 を連発して大喜び(笑)
そうか~。 やっぱりコッチの人にとって、日本語の文字ってホントに魅力的に見えるんだー。
・・・・ トイレ なのになー。


その後、博物館を存分に堪能し、帰ろうと出入口に戻ると
オジサンは私にウィンクをして(笑)、また手招き。

なんだなんだ? と思いながら近寄ってみると
「さっきと同じようにもう一度書いて欲しい」 と言って
またもや "Toilet Chiuso ・・・" と書かれた紙を差し出してきました。

んー?? さっき書いたものは・・・? と、ふと横に追いやられている紙に視線を落とすと、

なんと!! 私が書いた日本語の下に
大小いくつもの "トイレ使用禁止" が びっしりと書き込まれています!!(笑)
小刻みに震える線で、いびつな文字で、
ところによっては、二度書きどころか三度書き、四度書きと線を重ねて (笑)(笑)(笑)

私は笑いをこらえながら、一応尋ねてみました。
「これ、誰が書いたのですか?」

一瞬 恥ずかしそうな表情をしたオジサン。
しかしすぐに得意満面、 「もちろん、私だよ!」 と ニヤリ。

◆       ◆       ◆

きゅきゅきゅ・・・
新しい紙にもう一度、さっき以上にでかでかと書き入れました。
それをまた満足そうに見つめるオジサン。
今度は大丈夫かいな?(笑)


もし近いうちに、この博物館に訪れる予定のある方がいらっしゃいましたら、
博物館出入口左の壁、トイレの案内板の下に この紙が貼られてないか、
是非ちょっと見てみてくださいね。
黒太ペンの日本語の下に、
さらに文字が書き込まれていないかどうかも・・・(笑)

ちなみによくよく尋ねてみると、現在トイレが故障中というわけではなく
「清掃中や 故障した場合に 貼るからね~」 とのことでした!


  
| # by dicotomia | 2007-06-13 01:39 | 旅先のイタリア語
イタリアで出会う、古代ギリシアの街
南イタリア・カンパーニャ州。サレルノから列車で30分ほどの無人駅。
駅正面出入口からまっすぐ伸びる唐傘松の並木道、
何もない、のどかな田舎道を10分ほど歩くと到着します。


PAESTUM ― la più bella città della Magna Grecia
Greci, forti forse di precedenti frequentazioni e cognizioni sulla pianura, dopo essersi assicurati un avamposto fortificato in vicinanza del mare, vi fondarono intorno al 600 a.C. una città che chiamarono Poseidonia in onore del dio del mare...

約5kmにも及ぶ城壁で囲まれた、イタリア南部の古代ギリシア植民都市、
マグナ・グラエキア時代の遺跡群。1998年ユネスコ世界遺産登録。

特に、このパエストゥムの名声を世界的に高めている古代神殿の遺跡は
アテネ、シチリアと共に古代ギリシア建築の三大神殿と評されるほどのもので、
また、その保存状態の良さは本家本元のギリシアを凌ぐとさえ言われています。


Basilica/バジリカ (正式名称 : Heraion I/第一ヘラ神殿) ≫
イタリアで出会う、古代ギリシアの街_b0024177_4273587.jpg
イタリアで出会う、古代ギリシアの街_b0024177_428049.jpg紀元前6世紀中頃に建設された神殿で、
エンタシス(円柱中央部の膨らみ)が特徴的な
太く短い柱を持つ素朴で力強いドリス式建築。
また、神殿全体を取り巻くように列柱廊がある
ペリプテロス式(周柱式)神殿ですが、
通常ファサードの妻側と側面の平側の柱の
本数の比率は "1 : 2+1" になるところが、
この神殿は正面が9本、側面が18本という
異例の数で造られているとのこと。



Tempio di Nettuno/ポセイドン神殿 (正式名称 : Heraion II/第二ヘラ神殿) ≫
イタリアで出会う、古代ギリシアの街_b0024177_4285132.jpg
紀元前5世紀中頃に建設。ドリス式。円柱は正面が6本、側面が14本。
神殿内部は同じくドリス式の列柱が三廊に空間を仕切っており、
各柱の上にはもう一本ずつ柱が重ねられていて、高い天井と屋根を支えていたことがわかります。
3つの神殿のうち最も保存状態がよい貴重な遺跡。圧倒的な重厚感が迫ってきます。



Tempio di Cerere/ケレス神殿 (正式名称 : Athenaion/アテナ神殿) ≫
イタリアで出会う、古代ギリシアの街_b0024177_4291850.jpg
紀元前6世紀末頃の建設。円柱は正面が6本、側面が13本で、標準的なドリス式神殿。
ただ、内部ではプロナオス(前房)を支える8本の円柱には渦巻き型の柱頭の装飾が見られ、
既に部分的にイオニア式建築が導入されていたことは注目に値します。


イタリアで出会う、古代ギリシアの街_b0024177_430676.jpg

Quartieri di Abitazioni (居住区)Foro (公共広場)Macellum (市場)
Comitium (民会会議場)Curia (集会場)Anfiteatro (円形闘技場) ・・・・

ギリシア植民都市に続き、ローマ支配下の時代には、
商店や市場を備えたフォロが造られ、街はさらに拡張されていきました。

・・・・・

初夏を思わせる太陽の陽射しが じりじりと照り付けてきます。
世界的な価値を持つ遺跡群とはいえ、場所柄のせいか観光客もまばら。
だだっぴろい草原を漂う静寂の中、ゆっくりと風化していく石の塊たち。
ゆるやかではありますが確実な時の流れが肌に伝わってきました。

2500年前に建設された神殿。 街の跡。 繁栄と衰退。

ここで生活していた人たちは、日々何を思って暮らしていたのかな?


イタリアで出会う、古代ギリシアの街_b0024177_4303277.jpg
誰もいない Comitium に入り込む。
ふと横を見ると、半目を開け、アタマをやや上方に向けたトカゲがぴくりとも動かず佇んでいる。
その背中の色彩美に見惚れながら しばし様子を伺った後、ついカメラを向け接写してみた。
・・・なおも動かず。 おお、撮影OKですか。 それなら遠慮なく。 ぱちりぱちり。

その直後、人の気配がしたので振り返ってみると
「何を見てるの?」 といった表情をした 上品そうな白髪のおばさまが、こちらを覗き込んでいた。
欧米人観光客かな・・・
え、えーっと・・・ あ、あれ?? 「トカゲ」 って英語でなんて言うんだっけ!??

あたふたと曖昧な笑顔で、とにかく指で示してみる。

「Oh, ××!」
近寄ってきて、納得顔で応えるおばさま。

う。 聴き取れず・・・。

でも おばさま、嬉しそう(笑)
しばらくふたりで顔を寄せ合いながら、なおも微動だにしないトカゲを眺めてみた。

・・・・・

その後、ゆっくりと視線を遺跡に移し、またしばし眺める。
深い深い静寂に包まれる。

おもむろに おばさまが私を見て言った。
「What amazing place!」

あ。 今度は辛うじて聴き取れましたヨ。

私は深く頷いた。

そしてふたりで微笑んだ。



 
| # by dicotomia | 2007-06-11 00:26 | 旅先のイタリア語
ローマに来たならスペイン広場?
展覧会会場で放映されていたVTRを見てから、また、ユリさんにお話を伺ってから、
次回 ローマに訪れることがあったら必ず行ってみようと心に決めていたのがココ。

ローマに来たならスペイン広場?_b0024177_23414672.jpg

Casa Museo Giorgio de Chirico ジョルジョ・デ・キリコ美術館

デ・キリコの没後20年にあたる1998年11月20日に公開された、彼が晩年暮らしていた家です。
Dicono che Roma sia il centro del mondo e che piazza di Spagna sia il centro di Roma, io e mia moglie, quindi si abiterebbe nel centro del centro del mondo, quello che sarebbe il colmo in fatto di centrabilità ed il colmo in fatto di antieccentricità.
Giorgio de Chirico
Memorie della mia vita


◆       ◆       ◆


ローマに来たならスペイン広場?_b0024177_10504798.jpg要予約 (Orario e Modalità di Prenotazione)
ということで、まずは電話をかけてみた。
すると明日、明後日は既に予約満杯とのこと。
ええーっとお・・・・ ガイドブック等にも特に載っていないは、
扉横に小さな表札しか掛かってないは(場所は確認済み)、
極々ひっそりと運営してるのかと思いきや・・・?
それとも日本以外では結構有名なのかな~??
なんてアタマにハテナマークを散らしつつ、
仕方がないのでローマを発つ 明々後日の朝イチのガイド、
10時に予約。

ローマに来たならスペイン広場?_b0024177_23494084.jpg当日の朝、9時にはスペイン広場前に到着。
さすがにこの時間はひとけもまばら。
早速目敏くミサンガ売りのオヤジが 「コンニチハ~」 と
言いながら握手を求めてくる。 ノーグラ~ツェ。
本を読んで時間をつぶしつつ、扉の前をちらちらと
チェックするも、いっこうに誰も来ないよおー。
10時2分前。 思い切ってインターフォンを鳴らす。
「10時に予約した者ですが―」 そう告げると
「4階まで上がってきてください」 と扉の鍵が開く音がする。

おおーっ。 中に入ると、上のチケットにも印刷されている
『ヘクトルとアンドロマケ』 の
巨大ブロンズ像がお迎えだー!
ローマに来たならスペイン広場?_b0024177_2350329.jpg
正面奥にある階段を上っていくと、Museo(Casa)の
扉があり、気の良さそうな男性(今度は人間)がお出迎え。
入場料は5ユーロなり。
お釣りを取りに男性が奥の事務室に引っ込んだ途端、
自分の口元が思わず緩むのがわかる。
うわわーー、うれしいーーー♪
エントランス左右の壁にびっしり展示されている
彼の作品を間近に目にし、早速一気にトランス状態へ!
アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン・エンドルフィン大放出ー♪♪

その直後、他のお客・イタリア人のおばさま2名がやってきて、
結局この3人でガイドツアーは始まりました・・・。 って、あれれ? たった3人なのねん。

◆       ◆       ◆

ガイドはもちろんイタリア語。 メモ帳片手に聴き取れた単語を殴り書きしていく。
・・・いや、ほとんど聴き取れませんってば(汗)
仕方がないので第六感で聴く。

一つ目の部屋。 1940-50年代、"いわゆるキリコ" の作風を捨て、
ルネサンス、バロック、ロマン主義的な古典絵画技法に没頭していた時代の作品。
再婚相手・イザベラの肖像画。肖像画。肖像画。そして自画像。自画像。
また、(ややその拙さを否定することはできないと思われるが)
特にルーベンスの模倣と見られる、官能的で躍動感あふれるバロック技法作品が印象的。

キリコがいつも座ってくつろいでいたというソファ。 目の前にはテレビ。
タバコをふかしながらテレビを見る至福の時間。

正面の窓からはスペイン広場、『バルカッチャの噴水』 が見下ろせる。 Spazione Riservato。
向かいのアパートの窓辺やテラスにあるプランター。緑が映える。
部屋の角にはワインやリキュール、グラスのお酒セット。

二つ目の部屋。Sala da Planzo。銀食器に囲まれる。
正面の壁には眠るイザベラの絵。 Silenzione。
セザンヌの影響を受けたと思われる、食卓上の果物。静物画の数々。
しかし大きく異なるのは、彼、お得意の奥行き感のある背景とその中に浮かぶ石膏像。

三つ目の部屋。Galleria。
15枚近くの油彩画とブロンズ(+鍍金)像。
お馴染みのモチーフ。イタリア広場。工場。兵舎。城。塔。噴水。ポルティコ。鉄道駅。汽車。
月と太陽。マネキン。仮面。三角定規。幾何学形体。木の床。砂浜。プール。白鳥。
お馴染みのテイスト。停止した時間。静寂。沈黙。誇張された遠近感。不自然に長く伸びた影。
狂う距離感。非日常。神秘的。白日夢。郷愁。憂愁。憂鬱。忍び寄る不安感。悲哀感。孤独感。

入口まで戻って、階段を上って二階へ。
左に四つ目の部屋。Camera da letto(小)。ベッド。机。本棚。
右に五つ目の部屋。Camera da letto(大)。大きなベッドに豪華なドレッサー。
窓からは見えるのはスペイン階段上、二つの鐘楼が印象的なトリニタ・デイ・モンティ教会。
写真を撮ってもいいと言うので早速ぱちり。

廊下にはデッサン、習作が並ぶ。

そして最後、六つ目の部屋。 ・・・・興奮の最絶頂、アトリエ。
意識的に揃えたのか、明度の高い床に、白い壁、白い天井、白い本棚、白いソファ、白いカーテン。
そして大きな天窓からは陽光が降り注いでいる。
この部屋で、晩年のあの傑作たちが描かれたのか―――

二つのイーゼルにはキャンバスが二つ。
描きかけの絵。イザベラの絵とミケランジェロの模写か。
テーブルには絵の具。溶き皿。天秤。電気スタンド。クレヨン。ペン。
使い込まれたパレット。何十本もの汚れた絵筆。溶き油。油壺。
そして椅子の上にはグレーの上着。

壁際にはぐるりと本棚。 ・・・おおっと、その中に日本語タイトルを発見!
なぜか 『日本の凧』 (俵有作編著、薗部澄撮影、菊華社)が。
本棚の上にはギリシャ彫刻石膏像と作品模型がびっしり。
ブリキのおもちゃの馬車。マンマの写真。
Michel Guy から贈られた Accademico di Francia の剣。太陽の細工。

最後に、立て掛けてあるキャンバスの裏側を見せてくれる。
イーゼルに吊るされていたのは
ベル、タンバリン、馬の蹄鉄、唐辛子・・・と、 魔除けグッズの数々(笑)

以上、所要時間50分。 入口に戻って芳名帳に記帳しておしまい。

◆       ◆       ◆

確立し既に評価を得ていた独自の作風を捨て、いや、捨てるだけではなく否定までして
普遍的価値を求め古典絵画に傾倒したものの、晩年に初期の作風に回帰していった、
その経緯の真意については勉強不足のため知り得ていないのですが、
この Casa Museo を訪問して感じたことは、

戦争体験だったり、周囲の不理解だったり、
偏屈なアーティストをさらに無口に、孤独に追いやる過去があったとしても
少なくとも このローマでの彼の晩年の暮らしはそれなりに満たされたものだったのではないかな。
このような一等地に豪華な調度品を揃えた家を構える経済的な豊かさは
彼が得た多大な評価の表れであり、それは精神的安定へと繋がっていたと思われ、
また、数々の肖像画からは 傍らにいたイザベラへの愛情と信頼が感じられます。
窓やテラスの眺めからはローマの潤沢な街並みと人々の活気を享受していたに違いありません。

何より、白を基調とした光あふれるアトリエは穏やかな空気に包まれていました。

作品タイトルだったり、彼の作品を語る際によく使用される表現を
「お馴染みのテイスト」 として前述しましたが、
私がそこから受ける印象としては負の要素はそれほど強くありません。
たとえば彼の画風の特徴のひとつである、ハッキリと描かれた対象物の輪郭線。
何度も重ね描きされ、太さもバラバラな描線からはプリミティブな温かみを感じます。
絶妙なトーンでまとめられてはいますが、緑の空、赤い建物、黄色い地面など
色相差に富んだ配色はオモチャ箱の中を覗いたようなキブンに。
有機的に融合された幾何学形体、擬人化された物体、マネキンのフォルムやポーズ、
どれも非常にコミカルでチャーミング。
消失点へと長く伸びる建物や尾を引く影が切り出す不思議な遠近感には
積極的に視線を誘われ その先にある何かに期待感を抱かせられ、
通常パッセッジャータ中の人であふれるイタリア広場に全くひとけがないなんて、
いったい何が起こったのか? ・・・そんな謎解き想像力がかきたてられます。

そして、特に晩年の彼の作品からは
それらの表現に迷いの無い、より冴えた色彩と筆遣いが見て取れます。

穏やかな暮らしの中で、きっと彼は
次は何を描こうか、どんなモチーフを組み合わせようか、
わくわくしながら、楽しみながら、作品を創り出していたのだろう。。。

・・・・なーんて、甚だ勝手な解釈をしながら。
この旅、最大の興奮を得たのがこの美術館というのは
やはり自分のエセ・イタリア好きっぷりが如実に表れているような気がします・・・(笑)

◆       ◆       ◆

というわけで、今年もなんとかイタリアを旅してきました。
今後ぼちぼちと、相変わらず時系列を無視した旅レポをアップしていこうかなと思っています~。
| # by dicotomia | 2007-05-26 00:51 | 旅先のイタリア語
A tre passi dal paradiso. Ancora uno sforzo.
Del Piero sfrenato
Juve, è quasi fatta


Il capitano firma la rimonta sul Bologna con un rigore contestato
Conto alla rovescia: è serie A se il Genoa perde e il Napoli non vince

SALVA LA VITTORIA
Buffon strepitoso  Parate come gol
I gol dei portieri sono le parate.

Perché martedì la Juve potrebbe essere già in A

Juve promossa in A con 4 turni d'anticipo se stasera il Genoa perde e martedì il Napoli non vince: in tal caso la Juve avrebbe 9 punti sui rossoblù e 10(o 11) sui campani, che si sfidano nell'ultimo turno: una sola delle due a quel punto potrebbe superare la Juve, l'altra invece potrebbe solo affiancarla, restando comunque in svantaggio nello scontro diretto.

... Oggi il Consadole è passato in testa!
| # by dicotomia | 2007-05-13 19:27 | いろんなイタリア語
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